コンセプト②

ホームコンセプトコンセプト②

診断することの重要性

私が大井競馬場・増山ホースクリニックに勤めてから何年もの間、院長である増山先生からは、

『なんでこの治療をしたの?』とか
『結局、診断名は何なの?』

ということを、耳にタコができるぐらい口酸っぱく言われてきました。

『何でそこまで言われなきゃならないの??』

と抗う日々もありましたし、最初の頃はその意味がよくわからなかったのですが、経験を積むに連れてその重要性がよくわかるようになりました。というよりむしろ、そうすることが当然のことなのだということに気付きました。

三省堂の『新明解国語辞典』によると、診断とは『診察・検査を行った上で、病気の有無や症状などを判断し、必要な処置を決めること。』という意味で記載されています。

この『必要な処置を決めること』という部分が重要で、診断さえ正しくできれば、適切な治療に繋げられるというのが診断の意義なのです。

つまり、治療という行為は診断あってのことであって、診断の上に治療が成り立っていると言い切っても過言ではないと思います。

例えば、肩の跛行を主訴として診療を依頼されたとします。そこで、多くの場合、肩周りの筋肉に筋肉注射を施したりして、歩様が良化するのを待ちます。私も入社してすぐの頃は、同じようなことをしていた記憶があります。

しかし、ほとんどの馬たちは、数日すると歩様が再び悪化し、そこで『これは重度の肩関節炎だから』と診断され、休養に入り、そこで治癒する。ということが多々あるのです。

それは、他に患っていた箇所があったにも関わらず、休養したがために治癒した、と言っても過言ではないと思われます。

馬の前肢の跛行は、90%以上が腕節より下に発信源があると言われています。

『肩発信の跛行なんて、ほとんどないから。』

と私は厩舎関係者の方々に口酸っぱく言わせていただいています。

初見の診察で、肩以外の箇所を患っていると診断できていたら…。もっと最短で、スマートに治癒を目指せていたかもしれません。

話は逸れましたが、他にも診断がいかに大切かといった例は、枚挙に暇がありません。診断さえ正しくできれば、あとはそれに則って治療して行けばよいということなのです。

偉そうなことばかり言ってはいますが、診察してすぐに正しい診断を下すことは、そう容易なことではありません。

日々、一頭一頭の競走馬たちと真摯に向き合うことで、私たちの診断力を高めて行かなければならない、と痛感させられる今日この頃です。


2021.7
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